今、アナログ回路デザイナーに対する需要と期待が世界的に高まっています。ディジタル技術全盛のように言われていますが、実世界とのインターフェース部で必要となるアナログ回路は、その重要性が薄れるどころか、ますます高まってきており、システムの性能を決定付ける役割を担っています。
 アナログ回路設計と言っても、ハンダごてを片手に個別トランジスタや抵抗を基板に載せるという設計、試作スタイルは、もはや過去のものです。現在、半導体デバイスの微細化により、数億というあり余る数の高速トランジスタおよび受動素子を用いて、一つのシリコンチップ上に高周波・高精度アナログ回路、ディジタル論理回路、マイクロプロセッサ、メモリを搭載することが可能となっています。各種ブロックの混載は、システムを単にワンチップに集積する以上の意味を持ちます。例えば、アナログ、ディジタルの特徴を相互に補完しあうことで、従来には無かった機能、性能を実現することが可能となりつつあり、LSI設計の分野で現在極めて興味深い研究テーマとなっています。回路理論の知識だけではなく、ディジタル信号処理、制御、場合によってはソフトウェアといった広範な知識を持つことができれば、アナログ回路デザイナーは、より大きな付加価値を持つLSIを生み出すことができます。
 私は、(株)東芝SoC研究開発センターで7年間にわたりワイヤレス通信用LSIに関する研究開発に携わってきました。高周波アナログ回路からディジタルによるアナログ回路の制御・補正技術、ディジタル変復調器、トランシーバアーキテクチャという比較的広範な分野の回路・システム設計および評価の経験を積んできました。2006年4月に慶應義塾大学理工学部電子工学科に着任して、現在、研究環境を立ち上げています(本年度は既に黒田先生と共同の研究でチップの設計、試作を行い、現在評価を進めています)。
 企業での研究開発の経験を生かして、当研究室では、今後、ワイヤレス通信LSI、特にソフトウェア無線への応用をターゲットとした、アナログ・ディジタル協調回路、リコンフィギュアラブルアナログ回路技術に関する研究を進める予定です。研究の軸足はアナログ、ミックストシグナルLSI設計に置きますが、前述の通り、現在のLSIは極めて広範な先端技術の上に成り立っており、私自身ディジタル信号処理、制御、トランシーバアーキテクチャといった周辺分野にも非常に興味を持っています。限られた分野に没頭するのではなく、周辺分野の研究動向に常に関心を払い、積極的にその知見を利用し研究に生かしていきたいと考えております。
 LSI設計、とりわけアナログ、ミックストシグナル回路の設計は、実際にチップの試作、測定を行うことが非常に重要です。当研究室でも積極的にチップの試作、測定を行い、国内外の学術会議等で積極的に研究成果を発信していきたいと考えています。ワイヤレス通信あるいはLSI設計に興味を持っている、本格的なアナログ回路設計をしたい、そんな興味、希望を持っている学生さんは、是非、研究室の見学に来てください。

石黒仁揮 教授

研究室ポスター


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